高齢になると、食事を摂ることが大変になってきます。
食べるものを噛むというだけでも体力が必要なことなんですね。
ただし、ひとくちに高齢者といっても年齢だけで食事の内容を決めることはできません。
90歳を過ぎても元気でお肉が好きな人もいますし、70代であっても、体力が落ちたり、病気などをしている場合は、固形物を飲み込むことが難しく、食べ物をピューレ状にしたり、できるだけ食材を小さく切ったり、柔らかく調理するなどの工夫が必要な場合があります。
デイサービスや、定期的に病院の診察などを受けている場合は、担当のケアマネージャーさんや病院の看護師さんにどんな食事を作ったらいいのか、教えてもらうのもいいかもしれませんね。
こちらでは、家庭で高齢者の食事を作る方に向けて、調理の注意点や摂りたい栄養などについてまとめています。
高齢者の食事の特徴を知っておこう!
高齢者になると、「一般的に味覚の感覚が鈍くなる」、「咀嚼が大変になる」、「唾液の分泌が減る」「飲み込みにくくなる」といったことがあります。
今まで普通の食事をしていた人がいきなり、おかゆやピューレ状の食事などにしてしまいますと、食べたいという意欲をなくしてしまうことがありますので調理法には注意が必要です。
高齢者の食事を考えるときは、本人の体調や、好み、飲み込みかた、歯の状態などに合った食事ができるようにしましょう。
基本的には、本人の好きなものを中心に食事を作ることが好ましいのですが、高齢になると一度にたくさんの量を食べることが難しくなる場合があります。
食が細い場合や食欲があまりないときは、無理に食べさせようとするのではなく、栄養不足にならないように栄養補助ドリンクなどをうまく組み合わせてみるのもいいかもしれません。
高齢者の1日の食事の摂取カロリーの目安は?
高齢者の1日の食事の摂取カロリーの目安は以下の通りになります。
70歳以上の男性
比較的行動量が少ない人:1,850kcal
スポーツなどをしている人、または従事する仕事がある人:2,500kcal
70歳以上の女性
比較的行動量の少ない人:1,500kcal
スポーツなどをしている人、または従事する仕事のある人:2,000kcal
ただし高齢者の場合、加齢とともに病気や体力の低下などが起きている人もいるため、塩分制限、カロリー制限、糖分制限をしなければいけない人もいます。
上記の数字はあくまでも体調に問題がない健康な高齢者を対象にしていますので、病気があるなどの理由で、医師から食事制限をするように言われている人は、そちらの指示に従うようにしてください。
高齢者が食べやすい食事、食べづらい食事
高齢者が食べやすい食事には次のようなものがあります。
- おかゆ状のもの
- ヨーグルトのような状態のもの
- ポタージュ状のもの
- ピューレ状のもの
- ゼリーやプリンのようなもの
- ミンチ状のもの
- ある程度の水分が含まれているもの
- 柔らかく煮たもの
などがあります。
反対に高齢者が食べにくいものには以下のようなものがあります。
- 硬い皮があるものや硬い生野菜
- 繊維が多いもの
- 酸味の強いもの
- 弾力があるもの
- 噛みにくいもの
- のどに詰まりやすいものや口の中にはりつきやすい
「海苔」「わかめ」「きなこ」など
飲み込むことが大変になると、「水」「お茶」「味噌汁」といった水分もむせやすく、高齢者にとっては摂取しにくいものになっています。
高齢者の場合、むせて気管支などに水分や食べ物が入ってしまうと、誤嚥性肺炎などの原因になることがあります。
水分を摂るたびにむせてしまうようであれば、市販のとろみ剤などを上手に利用してみましょう。
ただし、とろみ剤を嫌う高齢者もいますので、濃度には注意が必要です。
高齢者の食事の悩みは?
高齢者の食事の悩みには以下のようなものがあります。
- 食が細くたくさん食べることができないので、栄養が足りているか不安になる
- ほとんど動かないのに、食欲があり食べ過ぎて肥満になってしまう
- 好き嫌いが多く、栄養が偏りがちになる
- 飲み込みが大変なので、むせることが多い
- 高齢者が食べられる食事を毎回作ることが大変
- 塩分制限や糖分などの制限があり、どんな食事を作ったらいいか悩んでしまう
食事を摂ることに対して、何の問題もない高齢者の食事は、噛みやすいように食材を小さめに切る、少し柔らかめにする程度でも問題はありませんが、一人で食事をすることが難しく介助が必要な高齢者の場合は、たくさん食べられなかったり、どんな献立を考えたらいいか悩む人も多いようです。
毎回、ちゃんとした食事を作ることは大変なので、介護用のレトルト食品を利用したり、離乳食のときのように、食事が完成する前に取り分けて、味を薄めにしたり、しっかりやわらかく煮るなどをして、食事を作る人の負担を減らすことも大切です。
高齢者の食事は栄養バランスが大切!摂りたい栄養は?
肉や野菜などが噛みきりにくくなってしまうなどの理由で、高齢者の食事で不足しがちな栄養素には、「たんぱく質」、「ミネラル」、「食物繊維」、「ビタミン」といったものがあります。
野菜などは柔らかくなるまで火を通したり、葉物野菜は葉先の柔らかい部分を利用すると高齢者が食べやすくなります。
また、食材をミキサーなどでピューレ状などにすると比較的簡単に必要な栄養素を摂るようにすることもできます。
ただし、私の父親もそうだったのですが、ドロっとした食感やとろみのある食感が好きではない人もいます。
栄養のバランスを摂ることは大切なのですが、無理強いをしてしまうと食事の時間がつらいものになってしまうことがあります。
本人が嫌がる形での摂取は避け、できる限り本人が好む形で食事をすることが望ましいといえるでしょう。
栄養バランスが大切な理由は?
高齢になってくると、一回に摂取する食事量が減ってしまう人が増えてきます。
食事の全体の量が減ってしまうので、少ない量でバランスよく食事をすることが大切になるんですね。
食事の量がどうしても摂れない場合は点滴などで補うこともありますが、一番望ましいのは食事として口から栄養を摂ることです。
ただし、栄養だけを気にしすぎてしまいますと、食事することを嫌がるようになってしまうこともあります。
本人の好みやペースも配慮しながら、しっかり食事が摂れるように工夫することが大切です。
高齢者が積極的に摂りたい栄養は?
高齢者が積極的に摂りたい栄養には、良質のたんぱく質と骨の形成に必要なカルシウム、体温維持に必要な適度な糖質や脂質などがあります。
具体的には、以下のような食材を意識して摂れるように工夫してみましょう。
肉や魚が食べにくい場合は、卵、豆腐などからたんぱく質を摂るようにしましょう。
ただし、肉や魚には卵や豆腐などには含まれていないアミノ酸やビタミン、ミネラルなどが含まれているものがあるので、食べられるのであれば、食べやすい形で肉や魚を食べることが望ましいでしょう。
他には、
- 牛乳やヨーグルトなどのカルシウム
- 緑黄色野菜、淡色野菜、キノコ類、芋類などのビタミン
- ミネラル
- 食物繊維
- ごはんやパンなどの穀類
- 適度な油、糖分
などもエネルギーを作ったり、体温を維持するために必要な栄養素です。
できるだけたくさんの種類の食材から栄養を摂れることが望ましいといえます。
高齢者の食事の注意点は?
食べる量は?食べられない時はどうする?
高齢者の食べる量には、個人差があります。
ごはんは、ひとくち、ふたくち程度しか食べられない人もいますし、逆に食べる人は、高齢でぜんぜん動かないのに、若い世代の人と同じくらいの量を食べる人もいます。
また、痴呆などがある場合は、自分が食事をしたことを忘れてしまうこともあり、何度も食事をしたがることもあります。
食が細い高齢者の場合、栄養が不足してしまうことがあります。
食事から摂ることが難しい場合は、栄養補助ドリンクなどをうまく利用してみましょう。
何度も食事をしたがる高齢者の場合は、1回の食事量を減らし、回数を増やすなどの工夫をしてみましょう。
食べ物の固さは?食べやすくする調理ポイント
食べ物の固さは、高齢者の『歯』の状態も大きく影響します。
入れ歯などをきちんと使用できる人であれば、自分でしっかり噛むことができますが、入れ歯を嫌がり、入れ歯をつける習慣がない人の場合は、ほとんどの歯がない高齢者もいます。
歯がない高齢者の場合は、噛み切ることができないので歯ぐきでつぶせるように、指で押したときにつぶれるくらいの柔らかさにしたり、噛まずに飲み込めるようにしておく必要があります。
飲み込みが難しくなっている場合は、食べ物の固さだけではなく、水分にも注意することが必要です。
あまり、水分のないぼそぼそしたものや、逆に味噌汁のように水分の多いものは飲み込みにくいので、「あんかけ」のようにとろみをつけるなどの工夫も必要です。
低栄養に注意!低栄養にならないためにできること
食の細い高齢者の場合、低栄養(栄養状態が悪く、栄養失調のような状態になってしまうこと)に注意することが必要です。
私の父も食が細く、風邪をひいて体調が悪くなってさらに食欲がなくなったときに低栄養状態になりました。
軽い肺炎も併発していたので、入院することになってしまいました。
かなり栄養状態が悪かったので、入院して点滴で栄養を補う状態になっていました。
退院後は、経口栄養補助剤を処方されました。
経口栄養補助剤とは、缶に入っている飲み物のようなもので、高い栄養を飲み物のように摂取することができます。
画像引用:https://twitter.com/ensyua_itigo
ただし、経口栄養補助剤は、医療用医薬品のため市販されていません。
病院を受診し、必要な場合に病院で処方してもらうことができます。
高齢者の肥満にも注意
反対にほとんど運動量がないのに、食欲旺盛な高齢者もいます。
私の母はこちらのタイプです。
高齢になると満腹感を感じる脳の反応が鈍くなる傾向があるようで、おなかがいっぱいになったという感覚が鈍くなっているようです。
食事の量を減らしてしまうと、満足感がなくなり、すぐに食事をしたがるようになるので、ごはんをおかゆ状にして少ない量でごはんを増やしたり、鳥のささ身などカロリーの低い食材を使い、量を減らさずにカロリーを下げるように意識しています。
まとめ
高齢者の食事は、栄養を摂るためにはもちろん必要なものですが、本人の体の状態によって食事の環境は大きく異なります。
食が細い人、食欲がある人、うまく飲み込めない人、介助が必要な人、食事制限がある人などそれぞれに高齢者にあった食事を考える必要があります。
食事は毎日のことなので介護する人の負担も大きいですね。
最近は、介護食も離乳食のように種類が増えていますので、たまには、こういった介護食を利用するのもいいと思います。
介護する側が無理をしてしまうと、作ることも介助することも大変になるので、食べてくれなかったりするとイライラしてしまうことがありますね。
高齢者が楽しく食事をするためには、介護する側も市販品などをうまく利用したり、担当のケアマネージャーさんに相談しながら食事を作ってみてください。
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