年齢を重ねてくると、日常生活の手足などの可動動作が思うようにいかなくなり、お口の中の悩みは頭の中で「考える」より深刻な問題になってきます。
今回は高齢者の「歯磨き介助」やそれに使う、歯ブラシ・歯磨き粉についてご紹介していきたいと思います。
高齢者は歯や口腔の悩みが多い!歯磨き介助が必要な理由
高齢の歯や口腔の悩みは?
高齢者が「健康で笑顔で活き活き」と暮らしていくためには、心身の衰えや悩みを解決することが大切です。
歯の悩みやお口の中の健康が「維持」できると、自分自身の歯でしっかりと噛み砕き、充実した食生活を送りことができます。
また「よく噛むこと」で脳細胞の血流が増加し、脳神経細胞の動きや、働きが活発になり認知症の予防にもつながるのです。
しかし、老化と共に高齢になると唾液の分泌量が少なくなり、それに伴いドライマウスになって口臭が気になるようになったり、虫歯にもなりやすくなってしまいます。
歯茎も下がり歯周病も進行して入れ歯をしなければいけなくなる方も少なくありません。
歯磨きの介助が必要な状態とは?
高齢者の皆さんは「一人の人間」です。
誰だって、他人の口の中はのぞきたくありませんし、また「のぞかれたくもない」です。
その為なかなか、お口の中お状態が介護従事者には把握しづらく、気が付いたときは「食べる」、「話す」といった事が、困難になっていることもあります。
気持ちが落ち込み、心安らぐ時間が少なくなり、小食になることで「低栄養・運動機能の低下」の状態になりやすくなります。
全体的に「生活の質」が下がり、「生きること」に意欲がなくなってしまい、介護される側も、介護する側も心身が不安定な生活になってしまいます。
それを防ぐために、高齢者の日々の「口腔ケア」でもある「歯磨き介助」が必要になってきます。
歯磨き介助が必要な理由
歯磨きができない状態の為、口臭が急にひどくなったり、食べこぼしが多くなったりするとストレスを感じます。
お顔の表情が少なくなったり、あまり人と関わらなくなるなど、お口の中のトラブルは心身の不調をきたし、その高齢者に歯磨き介助が必要になってくるのです。
食べ物が口に残りやすくなると、口内環境は悪化し、衛生的でないことが原因になり虫歯や歯周病が悪化します。
また高齢者の方々は入れ歯を利用していらっしゃる方が多くみられます。
手足の可動領域が弱い高齢者の方はご自分で「入れ歯の管理」、「洗浄」をすることができず、入れ歯を長時間お口の中に放置したままでいらっしゃるということは、まさに、不衛生そのものなのです。
そういった要因から、高齢者の皆さんにとって「歯磨き」という行為はとても大切で、必要なものです。
高齢者の歯磨き介助のやり方やポイントは?
歯磨き介助のやり方は?
歯磨き介助とは基本的には歯ブラシを使うものです。
歯ブラシを使った機械的な清掃がほとんどです。
ただ歯磨きを介助するのではなく、比較的磨きやすい前歯だけではなく、お口の中の奥歯の清掃も必要です。
歯磨き介助を行う時間は短すぎても意味がなく、最低でも1分以上は歯ブラシで清掃を行う必要があります。
ただあまり長すぎても口の中を傷めてしまうかもしれませんし、介助される方も不快に思うかもしれませんのでいけません。
歯磨き介助のポイント
高齢者の中には症状によって、ベッドに横になる時間が多い介護者もいます。
本当ならば基本洗面所で介助を行うことが理想的なのですが、ベッドで行う場合は起坐位、半座位の状態で行います。
これは高齢者に起こりやすい誤嚥性肺炎を予防するためです。
誤嚥性肺炎とは、お口の中の奥の方に食べ物が通過する食道と、空気が出入りする気管が「交差」しているため、誤って食べ物や唾液などを飲み込み、口の中の最近が肺に入り込み、肺が炎症を起こす症状です。
高齢者はこの症状が原因で「命取り」になったり、寝たきりになったりする場合もあるので歯磨き介助を行う時、介助者の姿勢や体調も注意しなくてはなりません。
歯磨き介助は「強制」な介護ではないのです。
介護者本人が「できる」ことであれば、本人の意思を尊重し、「歯磨きする意欲」の喪失を防ぐのも大事です。
歯磨きを嫌がった場合は?
ある介護者の方は、とてもきれい好きで、読書やご自分で短歌を読んだりすることを好む女性でした。
加齢が進み、軽度の認知症がみられ始め、手足の感覚が不自由になりご自分の身の回りの管理ができなくなっていました。
その女性の息子さんのお嫁さんが、あまり食事が進まなく元気がない姑さんの歯磨き介助を行っていましたが、なかなかうまくいきません。
ご本人が嫌がられるのです。
高齢者の認知症というものは記憶の低下です。無理やりにお口の中に歯ブラシを入れられたという記憶は長く続かなくても、感覚として「嫌だ・嫌いなこと」は心身に強く残ってしまいます。
歯磨き介助を嫌がった場合は、歯磨きを嫌なことと感じさせないことが重要な意味を持ちます。
毎日行う歯磨きを押し付けても、365日と考えればどうでしょうか?
歯を磨くことという行為に慣れてもらい、「歯磨きは気持ちがいい!気分が良くなる」と感じてもらえることで介護する側も、される側もニコニコと歯磨き介助ができる、そんなイメージを持つと、介護ストレスを軽減することにもつながります。
高齢者の歯磨き介助におすすめの歯ブラシや歯磨き粉などの役立つ用品は?
高齢者の口腔に合っている役立つ用品を活用するメリット
歯ブラシとぃつても様々なものがあります。
歯ブラシの持ち手などが「合わない」と歯磨きをするとき、落としたりします。
その場合個人差はありますが、持ち手の柄の部分にスポンジを巻き付けたりして、持ち手のグリップを太くしたり、歯ブラシを握る部分を変形できる「形状記憶歯ブラシ」などもあります。
また歯ブラシを極端に嫌がる高齢者の方にはガーゼを指に巻き付けて行う方法もあります。
うがいも必要なく、水道がなくても清潔に介助ができる「口腔ケア用口腔清掃ティシュ」など専用的な物もあります。
このように役立つ用品は地域のドラッグストアなどで扱っているので、必要に応じて利用できます。
高齢者の歯磨きにおすすめの歯ブラシは?
高齢者の歯磨き介助というより、高齢者にとっておすすめの歯ブラシは、ヘッド(頭)の部分が小さく、介護される高齢者の歯肉や歯の状態で選ぶことが大事です。
ただ固いものよりは最初は「やわらかめ」の方が望ましいです。
なぜなら歯の汚れ(歯垢)をやさしく除去し、歯肉の炎症など弱い部分を、傷つけることなく清掃ができるからです。
高齢者におすすめの歯磨き粉は?
歯磨き粉といっても様々な種類があります。
高齢者のお口の中の症状やお悩みで選ぶことができます。
- 虫歯予防
- 歯周病予防
- 知覚過敏(歯がしみる)
- 口臭予防・ホワイトニング
こういったタイプのものが良いのではないでしょうか?
私の祖父は90歳でほとんどが入れ歯になってしまい、一般的な薬用歯磨きでも口の中が粘ついてしまうということでいろんな歯磨きを試していました。
その中でも、口がサッパリして良かったと使っていたのが「生薬」の歯磨き粉でしたよ。
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高い歯磨き粉だから「良い」というわけではなく、その方その高齢者の症状や状態など一番に考えて、情報を整理し、共有し選ぶ。
近年では歯磨き介助・口腔ケアの重要性から、高齢者専門の歯磨き粉などの市場も増えてきました。
まとめ
人間にとって、また高齢者にとってお口の中は「食べる」・「息をする(呼吸する)」・「話す」・「笑いあう」など、人間らしい暮らしや、命(いのち)そのものの維持・大切な人たちとのコミュニケーション(表情)をつくる器官として大切なものです。
歯磨き介助は決して押し付けや・強制ではなく「気持ちの良い暮らし」を続けていくために「寄り添い・継続するもの」だと感じました。
ここでご紹介した情報を参考に、皆さんそれぞれのやり方で「質の高い」歯磨き介助に出会えるといいですね。
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